上場制度整備の実行計画2009
平 成 2 1 年 9 月 2 9 日 株式会社東京証券取引所
<はじめに>
当取引所では、株主・投資者の保護及び尊重を図りつつ、流通市場の機能を適切に発揮させ、上場会社の企業価値及び国際競争力の向上を支援する観点 から、上場制度の包括的な見直しに取り組むために、2007年以降、以下の基本方針を掲げ、上場制度の整備を図ることとしている。
この基本方針に基づき、2009年度については、以下の2つのテーマを中心に取り組むこととする。
Ⅰ 上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備
東証では、2008年度以降、東証グループの中期経営計画(2008年度―2010年度)の基本戦略において「上場会社のコーポレート・ガバナ ンス向上への支援の強化」を掲げている。2008年度はこの基本戦略に基づき、上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備を最重点 課題と位置づけ、内外の投資家から特に問題視する声の強かった第三者割当をはじめとする既存株主の権利を著しく害する企業行動への対応を早期に実 現することとし、安心して投資できる環境の整備を進めてきた。
こうした取組みは、コーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備の一環ではあるものの、取締役・監査役の監督機関としての独立性の確保等、ガ バナンス機構のあり方の問題やそれについてのアカウンタビリティの一層の充実をはじめ、東証として今後検討を進めるべきコーポレート・ガバナンス 上の課題は少なくない。折しも本年6月には、金融庁金融審議会スタディグループ報告(以下「スタディグループ報告」という。)、経済産業省企業統治 研究会報告書において、コーポレート・ガバナンスの強化に向けて一定の方向性が示されるなど、新たな展開もみられたところである。
・市場の健全性確保に向けて、上場会社等の市場関係者に対して証券市場を構成する一員としての一層の自覚を促すような制度を整備する。
・会社情報の開示の一層の充実を図ることにより透明性を確保する。
・投資者保護及び市場機能の適切な発揮の観点から、企業行動に対して適切な対応をとる。
・上場会社等の市場関係者にとってより使い勝手のよい市場の整備に取り組む。
・上記の対応に当たっては、国際的な整合性に配慮する。
Ⅱ 環境変化を踏まえた適時開示に係る制度及び実務の整備
ディスクロージャー、特に適時開示の分野の制度整備は、適切な市場運営を実現するための制度の根幹をなすものであり、東証として常にその充実や 実効性の確保による透明性の向上、環境変化や作成者、利用者ニーズへの迅速な対応を心がけている。
こうした中、近年、金融商品取引法における四半期報告制度や財務報告に係る内部統制報告制度の導入、適時開示を含む上場諸規則に係る実効性確保 手段(公表措置や上場制度違約金)の整備等が行われており、こうした環境変化に応じたより効率的で効果的な適時開示に係る制度及び実務の整備を図 っていくことが求められている。
また、国際会計基準(IFRS)を巡る世界的な議論の中で、我が国上場会社においても2010年3月期からIFRSを任意適用することが可能と なる見込みであるが、IFRSの採用は我が国資本市場の国際化に向けた重要な一里塚であり、東証として任意適用会社が円滑に実務対応できるよう関 係者と協力するとともに、必要な制度整備を図ることが喫緊の課題となっている。
こうした状況に鑑み、国内外から良質なリスクマネーと魅力的な投資対象を集めることで国際的な競争力の強化を目指す東証としては、「上場会社のコ ーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備」及び「環境変化を踏まえた適時開示に係る制度及び実務の整備」を本年度の最重点課題とし、上場制度整 備に取り組んでいくこととする。
<具体的検討の進め方>
各テーマにおける個別の論点については、以下の3段階の区分に整理し、2009年度の上場制度整備の実行計画として提示したうえで速やかに検討を 進めていくこととする。
①速やかに実施する事項
・本実行計画の公表後、制度要綱のとりまとめ又は要請その他の施策を順次実施する事項(施策の具体的な内容が特定されている事項については、来年 3月期決算に係る定時株主総会に向けた上場会社の事務日程等に配慮し、優先的に実施する。)
②具体策の実施に向け検討を進める事項
・来春を目途に制度要綱のとりまとめ又は要請その他の具体的な施策の実施に向け、必要に応じて有識者らを交えて検討を進める事項
③検討を継続する事項
・基礎的な問題点の洗い出しなど、実現に向けた検討を継続的に行っていく事項
<実行計画>
Ⅰ 上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備
項目 速やかに実施する事項 具体策の実施に向け検討を進める事項 検討を継続する事項
(1)取締役会 のあり方
○ 多くの上場会社にとって株主・投資者等からの 信 認 を 確 保 し て い く 上 で ふ さ わ し い と 考 え ら れるコーポレート・ガバナンスのモデルをスタ デ ィ グ ル ー プ 報 告 に お い て 示 さ れ た 考 え 方 に 沿って提示し、それを踏まえて、上場会社に対 し、それぞれのガバナンス体制の内容とその体 制を選択する理由についてコーポレート・ガバ ナンス報告書において開示することを求める。
○ 株主・投資者等からの信認を一層確保していく 観点から、ガバナンス体制の内容とその体制を 選択する理由に関する開示の充実に向けて、優 良開示例集の提示などについて検討する。
○ 最近の動向を踏まえ、上場会社コーポレート・ ガ バ ナ ン ス 原 則 の 改 定 や 規 則 上 の 位 置 づ け の 明確化、コーポレート・ガバナンス報告書の記 載項目の見直しについて検討する。
(2)監査役の 機能強化
○ 監査役監査を支える人材・体制の確保(このた めの内部監査・内部統制部門との連携)、独立 性の高い社外監査役の選任及び財務・会計に関 す る 知 見 を 有 す る 監 査 役 の 選 任 な ど の 監 査 役 の機能強化に係る取組みの促進を図るべく、こ れらを上場会社コーポレート・ガバナンス原則 において望ましい事項と位置付けるとともに、 各 上 場 会 社 の 取 組 み 状 況 に つ い て コ ー ポ レ ー ト・ガバナンス報告書において開示することを 求める。
(3)社外取締 役、監査役の 独 立 性 の 確 保
○ 上場会社に対し、社外取締役・監査役について、 コーポレート・ガバナンス報告書において、会 社 と の 関 係 に 関 す る よ り 具 体 的 な 内 容 の 開 示 を求めるとともに、当該者の独立性に関する会 社の考え方についても適切な開示を求める。
(4)独立役員 の選任
○ 上場会社に対し、一般株主保護のため、一般株 主 と 利 益 相 反 が 生 じ る お そ れ の な い も の と 上 場会社が判断する「独立役員」が存在すること を求める。
○ 上 場 会 社 の 経 営 陣 と 一 般 株 主 と の 間 に 利 益 相 反 が 生 じ う る 局 面 に お い て は 、 そ の 状 況 に よ り、独立役員に期待される役割に差異や軽重が あると考えられるため、各々の局面において独
項目 速やかに実施する事項 具体策の実施に向け検討を進める事項 検討を継続する事項 立 役 員 と し て 期 待 さ れ る 役 割 の 提 示 に 向 け た
検討を行う。
(5)上場会社 等 に よ る 株 主 総 会 議 案 の 議 決 結 果 の公表
○ 株主総会議案の議決結果について、単に可決か 否決かだけでなく、賛否の票数まで公表するよ う、上場会社に対して要請を行う。
○ 株 主 総 会 の 各 議 案 の 議 決 結 果 の 公 表 に 関 す る ルール化に向け、法令改正の動向を踏まえなが ら検討を行う。
(6)議決権電 子 行 使 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 利 用 促 進
○ 議 決 権 電 子 行 使 プ ラ ッ ト フ ォ ー ム の 利 用 促 進 に向けた方策について、一定の上場会社に対す る利用義務化の検討などを含め検討を行う。
(7)上場会社 の 企 業 グ ル ー プ 化 へ の 対応
○ 親 会 社 単 体 だ け で は な く 企 業 グ ル ー プ 全 体 と してコーポレート・ガバナンスの充実を実現さ せる観点から所要の環境整備を図る。
・上場会社のコーポレート・ガバナンスは、上場 会 社 の 企 業 グ ル ー プ 全 体 と し て 実 現 さ れ る べ きものであることが明確になるよう、上場会社 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 原 則 の 見 直 し を 行 う。
・中核子会社を有する上場会社には、当該子会社 が経営上の重要事項を決定する際などに、企業 グループとしての説明責任を果たすよう、当該 子会社の経営陣の見解を、親会社の見解とあわ せて、親会社の株主に対して適切に開示するよ う求める。
(8)最近の動 向 を 踏 ま え た 子 会 社 上
○ 最近の子会社上場を取り巻く状況を踏まえ、あ ら た め て 子 会 社 上 場 の あ り 方 に つ い て 検 討 す る。
項目 速やかに実施する事項 具体策の実施に向け検討を進める事項 検討を継続する事項 場への対応
○ 上記の検討を踏まえて、子会社の上場に当たっ て、親会社や兄弟会社などの出身でない、少数 株 主 の 利 益 を 十 分 に 配 慮 す る こ と の で き る 社 外取締役及び監査役の選任を求めるなど、利益 相反関係が適切に管理され、親会社による権限 濫 用 が 適 切 に 防 止 さ れ る よ う な 実 効 性 あ る ル ールの整備について検討する。
(9)株式の持 合 い へ の 対 応
○ 相 互 に 又 は 多 角 的 に 明 示 ・ 黙 示 の 合 意 の も と で、株式を持ち合っているような一定の持合い 状況の開示の制度化に向け、法令改正の動向を 踏まえながら検討を行う。
Ⅱ 環境変化を踏まえた適時開示に係る制度及び実務の整備
項目 速やかに実施する事項 具体策の実施に向け検討を進める事項 検討を継続する事項
(1)開示制度 の充実・変更 や 近 年 の 投 資 者 ニ ー ズ の 変 化 を 踏 ま え た よ り 効 率 的 で 効 果 的 な デ ィ ス ク ロ ー ジ ャーの推進
○ 投 資 評 価 や 企 業 経 営 が 連 結 ベ ー ス で 行 わ れ て いる市場実態等を踏まえ、連結ベースで重要性 が あ る 会 社 情 報 の 積 極 的 な 開 示 に つ い て 要 請 を行う。
○ 適時開示資料の作成にあたって、上場規則上最 低限含めるべき開示内容を明確化し、実効性確 保手段の予見可能性を高める対応を行う。
○ 非 上 場 の 親 会 社 等 の 会 社 情 報 に 係 る 適 時 開 示 等について、同様の趣旨で求めており、近年充 実 を 図 っ て い る 支 配 株 主 と の 取 引 内 容 や 支 配 株主等に関する事項の開示に統合し、実務の効 率化を図る。
○ 財 務 報 告 に 係 る 内 部 統 制 報 告 制 度 の 導 入 後 の 状況を踏まえ、経営者が内部統制に重要な欠陥 が あ る と す る 場 合 又 は 内 部 統 制 の 評 価 結 果 を 表明できないとする場合についても、上場会社 による適時開示を必要とする事由に追加する。
○ 四半期報告制度の導入後の状況を踏まえ、四半 期決算情報の適時開示について、迅速な開示を 実現可能とする観点から、効率的で効果的な実 務に配慮した見直しを検討する。
○ 上場会社の実務への定着状況及び関係当 局の検討状況をみながら、上場会社本体 の会社情報の開示の重要性(軽微基準) を連結作成会社にあっては原則として連 結財務諸表の数値を利用するよう、上場 規則の改正内容、実施時期について検討 を行う。
○ 新興企業のように企業規模の小さい会社 における負担が過重ではないかとの指摘 を踏まえ、会社組織の整備状況や事業規 模等を考慮した四半期開示や内部統制の 実務のあり方について検討を行う。
○ 国際的な議論の動向も踏まえ、より望ま しい四半期開示のあり方について検討を 行う。
○ 業績予想の開示を巡る議論を踏まえ、よ り適切な業績予想開示の方法等について 検討を行う。
○ 投資家サイドのニーズを踏まえ、決算情 報等の提供内容、提供方法等について改 善するべき点がないか検討を行う。
(2)IFRS の 導 入 に 向 けた対応
○ 東証市場の国際競争力を強化する観点から、上 場 会 社 に よ る I F R S の 採 用 に 向 け た 関 係 各 方面の動きに東証として必要な協力を行う。
○ I F R S 導 入 に 向 け た 議 論 を サ ポ ー ト す る た め、上場会社は、ディスクロージャー資料の適
○ 2 0 1 0 年 3 月 期 決 算 よ り I F R S の 任 意 適 用 が 内 外 の 上 場 会 社 に 認 め ら れ る こ と を 踏 ま え、既存の上場制度(例えば、会社情報の開示 判断に利用する利益基準)及び決算短信等の開 示様式について、IFRS適用会社についても 対応が可能となるよう所要の対応を検討する。
○ IFRSを採用している(採用すること を表明している)諸外国の上場制度や開 示面での対応策を調査し、我が国で想定 される問題点の整理を進める。
項目 速やかに実施する事項 具体策の実施に向け検討を進める事項 検討を継続する事項 切な作成の基盤となる会計基準の開発、変更及
び そ の 教 育 の 振 興 に 係 る 活 動 に 協 力 す る よ う 努めるものとする旨を企業行動規範(望まれる 事項)に明記することとする。
○ 内 外 の 上 場 会 社 に 対 し て I F R S の 任 意 適 用 が認められることに伴い、新規上場審査におい てもIFRSの任意適用が可能となるよう、任 意 適 用 を 認 め る 範 囲 及 び 上 場 審 査 基 準 等 に つ いて所要の対応を検討する。
以 上